皮膚筋炎 ・多発性筋炎
rheumatism多発性筋炎・皮膚筋炎ってなに?
多発性筋炎・皮膚筋炎は、筋肉の炎症により、筋力が落ちたり、疲れやすくなったり、痛んだりする病気です。
手指の関節背側の表面にがさがさとして盛り上がった紅い丘疹(ゴットロン丘疹)、手指、肘、膝の関節伸側のがさがさした皮疹(ゴットロン徴候)、上まぶたが赤く腫れぼったくなる皮疹(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な皮膚症状がある場合には、皮膚筋炎と呼ばれます。多発性筋炎・皮膚筋炎は、他の膠原病と同じく、主な症状以外にも様々な症状も現れることがあります。
特に、関節痛や(間質性肺炎による)咳・息切れ(間質性肺炎)がしばしば認められます。なお、医師によっては多発性筋炎を多発筋炎と短く呼びますが、厚生労働省難病として登録されている呼び方は、多発性筋炎・皮膚筋炎です。
こんな時もしかしたら多発性筋炎・皮膚筋炎?
腕に力が入らず、髪の手入れ、洗濯物干し、高い所に物を上げることがしづらい。太腿に力が入らず、階段昇り、座位からの立ち上がりがしづらい。
首に力が入らず、頭を枕から持ち上げにくいなどの症状があればこの病気が疑われます。前記のような皮膚症状があり、特に爪のまわりがほんのり赤くもなっている場合(爪囲紅斑)には皮膚筋炎が疑われます。
皮膚はしばしば痒みを伴います。寝たきりの高齢者では筋力低下がわかりにくく、喉の筋力が落ちて飲み込みがしづらくなることで誤嚥を繰り返して見付かることもあります。
検査について
診察で筋力を評価します。血液検査では炎症による筋損傷の程度を把握します。
この病気も他の膠原病と同じく免疫力が誤って自己に向いてしまうことが原因であるため、この病気に特徴的な自己抗体は検出されることもあります。
筋肉に針を刺して電気活動を観察する針筋電図や炎症の拡がりを把握する磁気共鳴画像検査もしばしば行われます。筋肉を一部だけ切り取って筋組織の様子を観察する筋生検も最終的な検査として行われています。
また、癌などの悪性腫瘍や間質性肺炎の合併も多いので、その有無を確認するためにCT画像検査その他も行われます。
そのため、通常は発症時に入院となります。
治療について

悪性腫瘍合併の患者さんではその治療を優先させます。悪性腫瘍がなければ、薬物療法が中心で、原則としてグルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)が使用されます。
皮膚症状のみの場合には局所グルココルチコイド薬が優先されます。筋炎もあれば、高用量(体重1kgあたりプレドニゾロンで1mg/日)での治療が開始され、2-4週間程度経った後、筋力や検査所見をみて有効な場合には減量し、数カ月かけて維持量にまで減量するという治療法がこれまで用いられてきました。また、このグルココルチコイド療法が無効の場合、減量によって再燃が認められる場合には、免疫抑制薬を併用していました。
しかし、グルココルチコイドには、糖尿病、胃潰瘍、精神変調、筋萎縮(グルココルチコイド筋症)、白内障や緑内障、 血栓症 、骨粗鬆症、食欲亢進などの副作用がでる可能性があります。その為、最近は免疫抑制薬を初期から併用してグルココルチコイド投与量を減らす治療が行われます。使用される免疫抑制薬は、アザチオプリン、シクロホスファミド、皮膚筋炎の場合にはミコフェノール酸モフェチル、間質性肺炎を合併している場合には、タクロリムスなどが保険で認められています。保険適用外の薬剤もよく使われ、特にメトトレキサートは初めから使用され、海外ではシクロスポリンも用いられます。ただし、メトトレキサートは、副作用として間質性肺炎を起こすことがあるので、間質性肺炎を合併している患者さんでは慎重にならざるをえません。
日常生活では、皮膚症状ある方に日光などの紫外線にあたることを最小限にしていただいています。
ユニークな治療法に 免疫グロブリン大量静注療法があります。グルココルチコイド抵抗性の症例に保険適用のあるこの治療法によって、急激に筋炎を改善させることができる場合があります。しかし、効果は一時的なので、毎月静注するか、他の治療法も併用して病気の活動性を抑える必要があります。
合併症で急速進行性の間質性肺炎がある場合には、初めから高用量グルココルチコイドに加えて免疫抑制薬を併用する強力な治療をすることが必須です。歌手の八代亜紀さんがこの病気の間質性肺炎で命を落とされたのは記憶に新しいところです。
当院の専門外来の特徴
当クリニック患者さんが通常治療で治療に困る場合、新薬治験のご説明や治験参加へのお手伝いもしています。
※水曜日AMに上阪 等先生が担当いたします。
上坂先生は厚生労働省自己免疫疾患研究班長、および本疾患研究分科会長を務めた経歴もあります。