診療案内

小児リウマチ膠原病外来

 

16歳未満(=若年性)の小児に発症する原因不明(=特発性)の6週間以上持続する慢性の関節炎の総称です。

日本ではこどもさん10,000人あたり1にみられ、成人になっても通院・治療が必要な患者さんを合わせると約8000人の患者さんがいらっしゃいます。

JIAは図のように7つの型に分類されます。わが国では全身型がもっとも多く、JIA全体の約3040%を占めます。

次に少関節炎が約20~30%、リウマトイド因子陰性多関節炎が約15~20%、リウマトイド因子陽性多関節炎が約10~15%、乾癬性関節炎は非常に稀で、付着部炎関連関節炎は1~7%を占めています。

 

全身型は幼児に多く、性差はありません。少関節炎も幼児に多く、男児より女児の方が多く発症します。

リウマトイド因子陰性多関節炎はどの年齢でもみられますが2歳頃と7歳頃に二つのピークがあり、女児の方が多く発症します。リウマトイド因子陽性多関節炎は学童期に多くみられ、女子の方が多く発症します。

付着部炎関連関節炎も学童期に多くみられ、男子の方が多く発症します

JIAの症状

関節の痛みと腫れのほか、長く続く発熱がみられます。発熱は40℃を超えるような高熱が突然出現しますが、短時間で自然に下がり1日中続くわけではありません。
このような発熱は2週間以上続きますが、熱のない時は比較的元気です。また多くの患者さんで発熱時にサーモンピンク疹(図1)
と呼ばれる発疹がでます。
発疹は通常かゆみはなく短時間で消失します。

そのほか、全身のリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れ、
漿膜炎(胸膜炎、腹膜炎)による腹痛や胸痛がみられることがあります。

指の小さな関節から膝・手首・肩などの大きな関節まで様々な関節に炎症が起こります。関節の痛みは朝に強く、関節リウマチと同じようにこわばりを伴います。

痛みを訴えることができない小さなお子さんでは、朝機嫌が悪い、触られるのを嫌がるなどの症状がみられます。

JIAの診断

他の関節炎の原因が否定された場合にJIAと診断されます。まずは問診と診察で、関節炎があるかどうかを確かめます。

血液検査では、炎症の反応(血球数やCRP値、赤沈値)、リウマチ因子や抗CCP抗体、抗核抗体などを調べます。

さらにレントゲン撮影や関節エコ―、MRI検査などで、関節炎の有無や重症度を調べます。

JIAの治療

全身型でも関節型でも、関節の痛みや腫れに対してはイブプロフェンやナイキサンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を使用します。

 

ステロイドを用いて治療します。病気の最初の勢いの強い時期には、大量のステロイドを使ってなるべく早く炎症を抑えます。

炎症がおさまった後は、再燃に注意しながらステロイドの投与量を減らしていきます。

多くの場合ステロイドは中止することができます。ステロイドだけでは炎症が抑えきれない場合、ステロイドの投与量を減らすと再燃してしまうような場合には、ステロイドの副作用の出現を抑えるため、トシリズマブ(抗IL-6受容体抗体製剤)やカナキヌマブ(抗IL-1抗体製剤)という生物学的製剤で治療します。

メトトレキサート(MTX)を用いて治療します。

MTXだけでは関節炎が治らない場合、重症で関節が破壊されてしまう可能性が高い場合、嘔気などの副作用でMTXの内服ができない場合などでは、エタネルセプトやアダリムマブ(TNF阻害薬)、トシリズマブ、アバタセプト(T細胞選択的共刺激調節剤)などの生物学的製剤で治療します。

JIAの注意すべき合併症

 

全身型では病気の勢いが非常に強い場合、マクロファージ活性化症候群(MAS)と呼ばれる命にかかわる重篤な合併症を発症する可能性があります。

MASは リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞が異常に活性化した結果、様々な炎症性サイトカインが 過剰に産生され、発熱のほか、血球の減少(特に血小板減少)、肝臓の異常、凝固の異常などがみられ、適切に治療されないと急速に進行・悪化して多臓器不全に至ることもあります。

 

約10%の患者さんにぶどう膜炎という眼の合併症がみられます。進行すると失明することもあるため、定期的な眼科検診が重要です。

抗核抗体 が陽性(160倍以上)、少関節炎、幼児期発症の患者さんでは特に注意が必要です。